日経新聞別刷りに「アニメは宗教よりリアル、か」というコラム
日本経済新聞に月1回別刷りとして付いてくる
「日経マガジン」の8月号に、アニメと日本人との関係について
書かれた「アニメは宗教よりリアル、か」というコラムが載っていました。
このコラムではまず、この夏お台場に登場した
“「実物大」ガンダム”と称されるそれの
「実物大」が意味する「実物」とは何か、との指摘が
なされていました。
パノラマ消費考現学
アニメは宗教よりリアル、か 石鍋仁美
東京・台場に今年夏、実物大のガンダムがお目見えした。アニメ「機動戦士ガンダム」で主人公が乗る兵器で、都市緑化や五輪招致のPR役を担う。
……右の一文に「あれ?」と首をかしげなかったろうか。「実物大」のガンダム。では、ガンダムの実物とは? もちろん存在しない。
ポスターや公式資料に「実物大」とあったためか、この言葉をそのまま使ったメディアも多かった。もちろん正確には、アニメ内の設定と同じ全長18メートルの模型、と書くべきところ。実物がないのに「実物大」で通じる。頭では創作と理解しつつも、心では実在に近いものとしてとらえられているからだろう。第一シリーズ放映から30年。ファンが作り手側に参加し、今も続編や新作が作られ続ける。
架空の世界に登場する兵器の「実物大」というのは
確かに変な言い回しではあります。
我々が架空の世界観をさも実世界と同等なものと
位置づけているのかも。
その上で、筆者は日本アニメが見ている側にもたらす
影響力について、アニメに宗教を代替する要素があったとの
一説を紹介しています。
こうした日本アニメの影響力について、建築専門誌「ランドスケープデザイン」の今年2月号で「全国民が共有する故郷の風景」となっただけでなく「宗教を代替する要素があったから」だと分析するのは兵庫県立大学准教授の竹田直樹氏だ。
戦後の日本は公教育の場で宗教教育を禁じた。一方、アニメは毎週定時に印象的な映像と歌、共通の話題を提供した。アニメは俳優が演じるドラマに比べ登場人物が「偶像化しやすい」と竹田准教授。キャラクターなどが宗教画や仏像と同じ役割を果たした結果、いま「アニメは宗教のように人々に信じられている」。典型がガンダムや宮崎駿氏の作品のカリスマ的な影響力だとみる。
政治や宗教の空白を埋めたのがアニメやゲームだったとすれば、政治家や神仏ではなくガンダムが、ひと夏とはいえ首都の顔となったのも必然かもしれない。愛知万博で一番人気は宮崎アニメに登場する架空の住居を再現した家だった。いっそ、ほかの作品の乗り物や基地や街も「実物大」で各地にどんどん再現したらどうか。外国人には珍しさやあこがれから、40代以下の日本入には現実の故郷よりも懐かしさに満ちた街として、人気が出るのではないか。
2次元のキャラクターしか愛せない、とまで言い切る人が
少なからずいる現状は、架空のキャラクターを
さも実在するかのように捉えているとも言える訳で、
「アニメは宗教のように信じられている」極端な一例
なのかもしれません。
そのように考えると、夏冬の年2回行われるコミケの長く続く行列は
日本アニメを崇拝する熱烈なファンによる
アニメという「信仰」に基づく「巡礼」なのかもしれませんね。