[ 悠 々 日 記 ]/ YUYUKOALAのブログ

コアラのように悠々と日々暮らしたいと考えている、とある人の日記です

パクリ騒動とパロディ・オマージュ作品への危惧

http://d.hatena.ne.jp/cesa/:TITLE=或はお望みのもの」の http://d.hatena.ne.jp/cesa/20051017/p1:TITLE=「ぱにぽに」と旧「ルパン3世」 の記事と
http://takekuma.cocolog-nifty.com/:TITLE=たけくまめも」の http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/10/post_9358.html:TITLE=マンガ家の描写盗用問題についての私見 の記事を
見てふと思った。


ぱにぽに」のあのシーンは明らかに
「ルパン3世」のシーンをトレスしたうえで再現したものだ。
そして作られたこのシーンは、
そのことに気付いた人々から素晴らしいと賞賛される。


一方「エデンの花」他、末次由紀氏の作品は
スラムダンク」のシーンや他の作品(まだ疑惑の段階だが)を
許可無くトレスして作画されたものだ。
そして、そのことに気付いた人々からは糾弾されている。


この2つ、どちらも商業作品からトレスしたうえで
新しい商業作品を生み出しているにも拘らず
評価は全く異なるものになっている。
この2つの間には一体どのような決定的な違いがあるのだろうか。


本来、作品の良し悪しはあくまでも作品の骨子
(この場合はストーリー)の出来によって決まるもののはず。
それを補佐するものとして、画風などの表現方法がある。
その表現方法に他社の作品を流用することが
作品の本質へどれほどの影響を与えるのだろうか。


ぱにぽに」に似たケースとして、「ジンキ・エクステンド」がある。
http://d.hatena.ne.jp/YUYUKOALA/20050204/1107514767:TITLE=「ジンキ」のOPは「ガンダム」、EDは「マジンガーZ」を元にオマージュとして作られている。


末次由紀氏の作品が「無許可で他者の作品をトレスしたこと」が
糾弾されている主な理由だとすると
このアニメのトレス・オマージュは予め許可を得て作られていると
いうことになってしまうが、はたして
ジンキ」スタッフは「ガンダム」「マジンガーZ」の関係者に、
また、「ぱにぽに」スタッフは「ルパン3世」関係者に
それぞれ許諾を取っているだろうか。
いずれもクレジットに表記されたという話は聞いていない。


そもそも、このような行為が本当に問題なのか自体を、
まず考えてみる必要がある。


一度発表した作品を第三者がどのように使うのか、
その作品の作者が第三者に利用制限をかけることができるのだろうか。
このような利用制限は現実的ではないし、実際にできるのは、
せいぜい著作者としての権利を侵害されるような場合だけだろう。


では、問題のトレス行為が著作者としての権利を実際に侵害したのだろうか?
この場合の権利侵害の定義を明確にすることは難しいので、
作品の骨子が同一または類似しており混同しやすいかどうかを、仮に境目としてみる。


では、とある一シーンの構図をトレスした作品が
元となった作品と同一のものだと誤認させるような影響を与えているだろうか。
結果は、2つの作品は全くの別物になっていることは自明だろう。
方やバスケ漫画、方や少女漫画であって、
全く違うストーリーなのだから、明確に別作品だといえる。
したがって、今回の行為が著作者としての権利を侵害したのかといえば
私には疑問が残る。


このように、著作者としての権利を侵害しない範囲であれば
どのように流用するかは原則として自由であって、
今回の出版社の対応は極めて厳しいものであると感じると同時に
無数の表現者に対して無言の圧力をかけるものではないかと危惧する。


ただし、参考にした作品に対しては敬意の念を持って
参考にした事実を明示すべきだったろう。
その点、今回の末次由紀氏の行動は残念だったといえる。
末次氏は堂々と巻末に参考資料として用いた資料を明記すべきだった。
そうすれば、このような大騒動にはならなかったであろう。


今回の騒動で何より残念であるのは、
「何から何までオリジナルであえることが作品の個性である」という意見が
何ら議論の無いままコンセンサスを得ようとしていることだ。
このことによって、パロディやオマージュ作品への影響が
出ないことを願わずには居られない。