直言兄弟(汗)記者が「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズをべた褒め
6/6の読売新聞朝刊の文化面の「今月の5冊」というコーナーで
"直言兄弟"で知られるオタク記者の一人、石田汗太記者が
小説版の「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズをべた褒めしていました。
流石、というべきか、書評に無駄がなく見事だなと思ったので
この場で紹介しておこうと思います。
ライトでシリアス 侮れぬ
『ダ・ヴィンチ・コード』や『ハリー・ポッター』と並んで、目下ネット書店などのベストセラーリストをにぎわしているライトノベルがある。谷川流の『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズだ。
既刊8冊で250万部。部数急伸はテレビアニメ化効果も大きいが、小説として結構侮れない。最新刊の『涼宮ハルヒの憤慨』まで一気読みしてしまった。
性格自己中な女子高校生が、この世の面白い不思議を求めて「SOS団」なる学内サークルを結成する。適当に集めた団員の正体はそれぞれ宇宙人、未来人、超能力者で、ハルヒ一人がそのことを知らない。団員らの使命はハルヒに愉快で平穏な日々を送らせること。なぜなら、この世界はハルヒが見ている「夢」かもしれないという恐るべき仮説があり、彼女が世界に飽きれば、何が起こるかわからないのだ。
世界の命運が学園の日常に直結するという趣向は、70年代のジュヴナイル(少年向け)SFにもある。が、日常から非日常へ物語が飛躍するのでなく、非日常的な面々が、崩壊ギリギリの現実の中で、「あたりまえの日常」を必死につむいでいくという逆転は、いかにも2000年代的だ。基本的に明るいドタバタコメディーだが、10〜20代のライトノベル世代の、世界に対する漠然とした「不安」を映しているようにも感じられる。
ライトノベルとしてはクセのない優等生的な作品。萌えアニメ絵の表紙にひるまず、ぜひ一度手に取ってみてほしい。
(以下略)
(石田汗太)
■谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』ほかシリーズ7冊(角川スニーカー文庫)
美少女度 ★★★★☆ SF度 ★★★☆ 価格 ★★★★ (★5つが満点、☆は1/2点)
この書評は別にオタク向けのページに掲載されていた訳ではなく
むしろ一般の人向けの朝刊の文化面の文芸のコーナーにあったものです。
この作品について、かなり判りやすくまとめてあり、
そして的確な分析をされているなという印象を受けます。
今回は「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズのほかに、
乙一「銃とチョコレート」など、全部で5冊を紹介しているので、
機会と時間があれば、それらも是非読んでみたいと思います。